七十二候では大暑の次候「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」を迎えました。
梅雨明けの猛暑はほとんど風がなく、しかも蒸し暑い日が続きます。じっとりとまとわりつくような熱波で、ただ外にいるだけで、いつのまにか肌はべたべた。高温多湿の日本の夏の厳しさを、毎年のことながらおもいます。肌がかさかさになるほど乾燥するヨーロッパの夏とは対照的です。
蒸し暑さをあらわす溽暑(じょくしょ)という言葉は晩夏の季語で、和暦の水無月(現在の7月ごろ)の異称としても使われます。ゆらゆらと目が眩むような熱気で舗道も火のように熱くなるので、「炎天」「炎ゆる」「灼くる」といった季語もあります。
ずっと続いていた暑さが一瞬、収まった昨日、アブラゼミやミンミンゼミに混じって、ツクツクボウシが鳴き出しました。「オーシーツクツク、オーシーツクツク、オーシーツクツク、イーヨーイーヨージーー」。みなさまの地域はいかがでしょうか。
ツクツクボウシの声を聴くと、夏もひとつ峠を越えたのだなとほっとするような、少し切ないような気持ちになります。日本の夏の暑さは容赦ない日照りが続く梅雨明けの今がいちばんきつく、立秋(8月8日頃)には朝にかすかな涼しさを感じたり、夕方の虫の音が始まったり、暑さの中にもどこか秋の気配が混じり始めます。日中はまだまだ当分、暑い日が続きますが、朝夕の変化や動植物の変化に注目していただくと、いろいろな変化が感じられるのではないかとおもいます。
今回はそんな炎暑の中で咲く花たちをご紹介します。
百日紅(さるすべり)は梅雨明けの目安とされる花。ちりちりとした花は咲いては散り、咲いては散りして百日間咲き続けることからこの名があります。
天使のラッパのようなオレンジ色の凌霄花(ノウゼンカズラ)。百日紅と並んで日本の夏の代表的な花。チャイニーズ・トランペット・フラワーとも呼ばれますが、平安時代から日本で親しまれてきた花です。凌霄花の凌はしのぐ、霄は空の意で、フェンスなどを伝って空をしのぐように高いところへ登って咲きます。炎天下でも次々と咲き続け、アリやミツバチなど多くの虫がやってきますが、じつは鳥媒花で、ヒヨドリがよく訪れます。
夾竹桃(きょうちくとう)も百日紅(さるすべり)と同じく花期が長く、梅雨明けから3ヶ月以上、咲き続けます。インド原産で、乾燥や大気汚染に強いため、高速道路沿いでもよくみかけます。強い毒性があるため切り花にはできず、盛夏らしいと眺めるのみの花。
ハイビスカスの仲間で、江戸時代、紅蜀葵(こうしょくき)と呼ばれていました。ひたすら高く高く、背を伸ばしていき、ハッとするような真紅の大型の花を咲かせ、真夏から秋の訪れを告げます。わが家の塀の前でも毎年、咲いて、季節を知らせてくれます。
大きな芙蓉(ふよう)の花。これから初秋にかけて、パラボナアンテナのような薄い花びらを大きく広げてふんわりと咲きます。みずみずしい葉の色合いも美しく、いかにも涼しげにみえます。
お好きな花はありましたでしょうか。真夏日にみずみずしく咲く花たち。まだまだ暑さが続きますが、疲れが溜まらないよう、十分な睡眠をとって元気に乗り切りましょう。
出典・暦生活