「熊蟄穴(くまあなにこもる)」は七十二候の中で、もっとも好きな一候です。
七十二候の多くは、気象の変化や花の開花、鳥や蝶など、実際に目でみることができるものですが、熊が穴にこもる瞬間というのは、絶対に人が目にすることができない光景です。
今年はドングリが全国的に不作で、熊の出没が度々ニュースにとりあげられていますが、原因はドングリの不作だけではないともいわれています。山の熊道にクリやカキを置いて、里山に降りないようにしている団体もあるようです。先日、ワシントン州に在住する知人も、例年なら敷き詰めるように降るドングリが今年はほとんどないとのこと。ドングリの不作は日本だけの現象ではないようです。
ところで、「熊穴に入る」といえば初冬の季語、「熊穴を出ず」は仲春の季語ですが、単に「熊」といえば、活動期の夏ではなく、冬の季語になります。
面白いですね。実際にみることがないのに、です。昔から人々が冠雪の始まった山を見上げ、冬ごもりする熊をそっと思いやってきたからかもしれません。人と熊は出会うことなく生きていくのがいちばんですが、たとえ会うことがなくても、共に生きるものへの慈しみや畏敬の念が季語になっていくのでしょう。
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