秋分の初候「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」は、春分の末候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」と対になっている七十二候です。
次々にやってくる台風の季節が終わり、暑さもすっかり遠のいて、急にひんやりした空気が流れ始めます。はっきりと秋になったと感じられる頃でもあり、金木犀がふんわりと香ったあと、彼岸花が咲き出し、穏やかな秋晴れが続きます。
ちょっと冷たく感じるような涼しい風が吹いている。これぞまさに「金風(きんぷう)」。一年でもっとも「爽やか」な季節です。あちこちで稲刈りが始まっていますが、うちの田んぼもようやく実りのときを迎え、もうすぐ稲刈りに入ります。
稲は収穫直前に台風に見舞われて、重くなった稲穂がなぎ倒されてしまうことがあるのですが、「稲妻」「稲光」とも呼ぶように、雷は昔から稲の成長を助けると考えられ、雷が多い年は豊作になるとされてきました。
雷は雲と雲、天と地の間に起きる放電現象で、実際に大気中の窒素を雨とともに地中に流しこみ、植物の育成を助けているので、昔の人はそのことを経験則で知っていたのでしょう。雷という字も「雨に田んぼ」で、かみなりという読みの語源は「神鳴り」です。
今年も無事に終わった、という安堵とともに見上げる中秋の名月を迎え、虫の音も涼やかに聴こえます。この季節は夜風も気持ちよく、私は窓をあけて日々、変わる虫の音色に耳を澄ませながら眠りについています。
同じ虫でもなわばり宣言、呼び鳴き、求愛鳴きと変わりますので、最近のこの甘く優しい鳴き声はお相手がすぐ近くにいるからなのかしら、などと思ったりしています。気温が下がってきたことも関係しているでしょうか。
秋の月は冴え冴えと美しく、立待月、居待月と欠けていきます。暑くもなく、寒くもなく、いちばんすごしやすい季節。秋の夜長を楽しみましょう。
出典:暦生活