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季節のコラムCOLUMN

色と季節

遠野

「色と季節の関係を紐解く講座〜遠野の森」レポート

 

文と写真:和暦研究家 高月美樹
(協力・一般社団法人ハヤチネンダ、クイーンズメドゥ・カントリーハウス)

先日行われた「色と季節の関係を紐解く講座〜遠野の森」のレポートをお送りします。このプログラムは色と季節の関係を知る講座シリーズのリアル番外編として行われ、さまざまな新緑の色のバリエーションを観察することを目的に初夏の森を歩いたり、田植えをしたり、馬とのつきあい方と共に自身の在り方を見つめるというプログラムです。

むら若葉

あらとうと青葉若葉の日の光 芭蕉

すべてのものが活気づき、光を受けてさざめき出す季節。木々の葉は日に日に盛り上がるように成長し、若葉、青葉の微妙な色合いの違いが光を浴びてかがやく季節です。

1日目はまず土地勘を得るために森を歩きながら、森の奥にいる馬を探しにいきました。

ようやく見つけた馬と、背景に広がる美しい若葉の美しさに、みなさん感嘆の声をあげていました。若芽色、若葉色、若緑、黄浅緑、萌黄色、白緑、山藍摺、、、色々な色が見えます。

耳のいい馬たちは、人間の姿が見えるずっと前から、近づいてくる気配を感じているのだそうです。その気配に、捕獲など人の意図があるかどうか、歩き方や雰囲気も敏感にキャッチしているのだとか。ですので、馬との出会いは姿を見つけるずっと前から始まっているのだそうです。

手前の森にいた3頭の牝馬たち。新緑の木々の合間に見え隠れする馬の姿も美しく、この季節ならではの光景です。若葉は夏が深まるにつれ、あっというまに深く濃くなっていきます。そしてこの馬たちはもうすぐ山の上の広い放牧場にいき、百頭近い馬たちと共に夏を過ごします。

 

 

初夏特有の複雑な緑のバリエーションは、秋の紅葉の時と同じく、日本の植生の豊かさの証です。このようにさまざまな濃淡が美しいことを「むら若葉」、または「うら若葉」といいます。

山や森にみえるときは「山若葉」、「里若葉」、「森若葉」などと表現することができます。

年とつた木もたちかへる若葉哉 子規

初夏の白い花たち

初夏の森にはさまざまな白い花が咲いています。淡くもやいだ色合いに見えるのは若葉だけでなく、クリーム色や白い花が咲いているためでもあります。

クロモジの花/ウワミズザクラ
ガマズミの花/ミツバウツギ

そして地面にもやはり白い花が多く咲いています。この森だけで40種以上の山野草が咲いていました。その一部をご紹介します。

延齢草(エンレイソウ)/二輪草(ニリンソウ)
稚児百合(チゴユリ)/舞鶴草(マイズルソウ)
雪笹(ユキザサ)/甘菜(アマナ)

車葉草(クルマバソウ)/喘息薬種(ズダヤクシュ)

若苗色

2日目の朝は田植えから始まりました。若苗色を初めて間近に観察する人も。苗代で育った苗は黄色味が強く、いかにも若々しい色合いです。遠目にも鮮やかさがよくわかります。馬も近くにきて、のんびり草を食んでいました。賑やかな笑い声を聞いて、馬たちも穏やかな気持ちでいるようです。

田んぼの周りもさまざまな青葉、若葉に囲まれ、明るく輝いていました。清らかで瑞々しい風景。

そして午後はあらためて森をゆっくり観察しながら、3時間半かけて歩きました。これは山ツツジよりも大型の蓮華ツツジ。別名、馬ツツジです。

結び葉

歩き疲れて休憩した森ではふかふかの落ち葉の上で、いつしかそれぞれが自然に横になり、空を見上げていました。

見上げると木々に囲まれて穴があいたような空がみえます。互いに伸び出した若葉の枝先が重なりあって、結ばれたように見えることを「結び葉」といいます。

結び葉や樹下の仏は印結び 狩行

「結び葉」は若葉同志がつながっていく、初夏特有の美しい姿です。ぜひみなさんも樹木の下から、空を見上げてみてください。

翠蓋

さらに夏が深まると、張り出した木々が重なり合って屋根のようになるので、それを翠蓋(すいがい)といいます。翠の屋根です。夏の森の中は雨が降っても、傘が要りません。木の葉を伝った青葉雨が時折、ポタっと落ちる程度。暑さもしっかり防いでくれますので、夏の森は昼でも暗く、しっとりとしています。

窓若葉

そして午後は色の講座です。にっぽんのいろ日めくりカレンダーを机に並べ、実際に森で見てきた色を照らし合わせながら、色名を確かめました。

色を知ることは、自然界を知ること。ほかには初夏になぜ白い花が多いのか、風と樹木の構造についてのお話など。

窓の外も若葉でいっぱい。室内からみえるのは「窓若葉」、「庭若葉」といいます。

そして最終日の3日目は馬とコミュニケーションを学ぶ日。

まずは森の中へ馬を探しにいき、

馬と人間がひとつの群れになって、ゆっくりパドックへと誘導します。

パドックでは一人ずつ、馬を引いて歩くというリーディングを体験させていただきました。リードするのは人間ですが、馬は人の感情も感じているので、こちらの在り方が問われます。手綱をゆるめ、アイコンタクトやボディランゲージを使いながら、どうしたら馬が歩きたくなるかを考え、ゆっくりコミュニケーションしていきます。

パドックでも青葉が目にしみるように美しく感じました。

優しい馬たち。お役目終わって、三頭の馬たちはゆっくり森に帰っていきました。

若葉して又新たなる心かな 漱石

山菜やキノコなど素晴らしいヴィーガン料理。毎回、食事が楽しみでした。

出典:暦生活

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