二十四節気と七十二候
今日は七十二候「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」についてのお話です。
いよいよ田植えの準備が始まり、代掻きや畦塗りの季節に入りました。田んぼに水が引かれると冬眠からめざめたカエルたちは早速、卵を産みにやってきます。そしてちょうど田植えの頃になると孵化して、田んぼの中は元気に泳ぎ回るおたまじゃくしでいっぱいになります。
おたまじゃくしというと長いで、俳句の世界では蝌蚪(かと)と2文字で表現します。長いぬるぬるした帯状の卵のことは「蝌蚪の紐」または「数珠子(じゅずこ)」といいます。
田植えの準備に入る季節、カエルたちとの久しぶりの邂逅も楽しみのひとつです。いちばん数が多いのは小さくてかわいらしいニホンアマガエル。アマガエルは周囲の色に合わせて色が変わるので、緑と茶色がまざっていたり、白っぽくなっていたりしますが、緑になると模様はなくなり、茶色になったときだけはっきりとまだら模様がみえます。
アマガエルは人の手に乗ってもすぐに逃げようとせず、じっとしていたり、手によじのぼったり、遊び相手にもなってくれるおとなしいカエル。吸盤のついた小さなおててが好きな方も多いのではないでしょうか。
ほかにヤマアカガエルやシュレーゲルアオガエルも田んぼに住む仲間たち。ヤマアカガエルは長い脚と縞模様が特徴。キュルルル、キャラララと妖精が笑っているような声で鳴きます。
畦塗りをしていると必ず出会うのが、ぷかぷかと浮いているシュレーゲルアオガエルの真っ白な卵のうやアカハラ(日本イモリ)たちです。
シュレーゲルアオガエルの白い卵のうはセリやクレソンの水際にぷかぷか浮いていたり、鍬を入れた土の中からポコンっと出てくることもあります。アマガエルはたくさんいますが、シュレーゲルの数は少ないので、今年も元気に卵を産んでくれたのだなとうれしくなります。
シュレーゲルアオガエルは大変、美しいカエルですが、年々減少し、準絶滅危惧種に指定されているところもあります。みなさんよくご存知のニホンアマガエルより大きく、まぶたは鮮やかなゴールド。アマガエルにはある黒いアイラインがないことが見分けポイントです。
まさに全身が緑。シュレーゲルという外来種のような名前がつけられていますが、じつは日本の固有種です。動物学者のヘルマン・シュレーゲル氏の名前がつけられた日本のカエル。これぞアオガエルです。ニホンアマガエルはアマガエル科、シュレーゲルアオガエルと樹上で暮らすモリアオガエルがアオガエル科です。
アマガエルの鳴き声はクワクワ、ケッケッですが、シュレーゲルアオガエルの鳴き声の方がコロロ、コロロロと細くきれいな声です。もし姿がみえなくても、声を覚えておいていただくと存在がわかって楽しくなります。
出典:暦生活