田んぼの畦には、7月に入るとニホンハッカ(日本薄荷)の花が咲き始めます。近くにいくと清々しいいい香りが漂っています。ニホンハッカはシソ科ハッカ属の多年草で、日本に自生する在来のミント。「和薄荷」と呼ばれることもあります。
ニホンハッカの花は双生する葉の付け根に、段々の房のようにかたまって咲く小さな薄紫の花です。花期も長く、9月ごろまで次々と咲き続けます。ミントなので虫がまったく寄りつかないかというとそうでもなく、虫にもなかなか人気があって、ミツバチやチョウがよく吸蜜にきているので、私とっては虫の観察場でもあります。
ミントは140種以上ありますが、大きくわけると西洋ハッカはペパーミント、オランダハッカはスペアミント、そしてニホンハッカはクールミントに分類され、数あるミントの中でももっとも強い爽快感があり、抜群にメントールの含有量が多いのがニホンハッカなのだそうです。
そのため、かつては海外に盛んに輸出され、なんと世界シェアの7割以上を担っていたこともあるのだとか。古くはニホンハッカを薬草として好んだ上杉謙信が栽培を奨励し、明治には山形、北海道に広がり、昭和初期には北見が一大産地となったそうです。
戦後は他国の安い産地に押されたり、合成ハッカが台頭したこともあって、日本での栽培はほぼ途絶えて今日に至っていますが、自生のハッカは今でも各地で健在です。湿気のある草地にひっそりと自生し、近年は在来の和ハーブとして再注目されています。
またヒメハッカ(姫薄荷)は古くからある日本固有種ですが、準絶滅危惧種。ヤマハッカ(山薄荷)はまだ全国の山地で見られますが、ニホンハッカより濃い紫で、ほとんどメントールを含まないヤマハッカ属です。
ニホンハッカの花は楚々として涼しげな花で、白に近い、淡い、淡い紫。色名でいうと「薄色」でしょうか。小さく目立たない草花ですが、日本の大事なミントです。春は小さな草にしかみえませんが、夏になるとぐんぐん背丈をのばし、一斉に花を咲かせるので、みつけやすくなる時期です。みなさまのお住いの地域には咲いていますでしょうか。
出典・暦生活