『礼記』の月令には「天気上騰シ、地気下降、天地不通、閉塞シテ冬ヲ成ス」と記され、七十二候はこの最後の部分を採用したものです。日本では「閉塞」を「そらさむく」と読ませ、重く塞がれたような冬の空を思わせますが、本来の意味は天の気は空に上がり、地の気は地中に閉蔵され、天と地が分かれ、通じ合わなくなって冬になるという意味です。春から秋まで行われていた天地の交流が終わり、お休み期間に入るような感じです。
日差しの弱さは感じるものの、天気のいい日はまださほど寒くはなく、青空もみえます。カエデやモミジのピークは過ぎましたが、紅葉シーズンの最後を飾るイチョウは今が盛り。太陽の光を浴びて、眩しく輝いています。
プラタナスの大きな葉は勢いよくバサバサと落ち、見上げるとすっかり葉を落とした枝に、ポンポンと丸い実がたくさん、音符のように並んでいました。
プラタナスの和名は、鈴懸(すずかけ)の木。山伏の鈴懸衣(すずかけころも)についている玉飾りに似ていることからついた名ですが、トリュフチョコレートのような茶色の実が枝にしっかりと残って、ぶらぶらと寒風に揺れる姿も冬ならではの光景です。
七十二候「閉塞成冬」は冬ごもりの合図でもあります。コトコトと料理をしたり、家の中を快適にするために何かちょっとした工夫をしてみたり。家の中でできることを楽しむ季節です。
せわしない年末に入りつつありますが、「忙中閑あり」。あたたかく、幸せを感じるおうち時間を味わいましょう。わが家はリンゴを一箱いただいたので、アップルパイを作ってみました。
文責・高月美樹
出典・暦生活