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季節のコラムCOLUMN

二十四節気と七十二候

七十二候/水泉動しみずあたたかをふくむ

七十二候は今日から小寒の次候となり、第六十八候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」に入りました。
初詣の頃の穏やかさから、一段と寒さが増し、いよいよ凍てつくような寒さがやってきました。びゅうびゅうと冷たい風も吹いています。つい出かけるのが億劫になってしまいますが、みなさまはいかがおごしでしょうか。

寒さを擬人化

『みんなのうた』で知られる「北風小僧の寒太郎」。みなさん、聞いたことがあると思いますが、「寒太郎」という名前は、歌になる以前からあった言葉で、寒の入り、つまり小寒の初日を擬人化した表現です。

厳しい寒さといえば「冬将軍」といういかめしい言い方もありますが、「寒太郎がやってきた」などと言うと、なんとなく親しみを感じますね。歌とともにアニメ化されてすっかり人気者になった寒太郎。厳しい寒さを擬人化することによって、寒太郎だって役割があって、がんばっているのだ、と心を寄せる気持ちになります。
なんと、「北風小僧の寒太郎」は『みんなの歌』の中で、もっとも再放送の多い曲なのだそうです。

そして「寒四郎」は寒の入りして四日目のこと。昔の人はこの日の天候で、今年の麦の収穫を占いました。晴れると麦は豊作に、雨や雪だと凶作になるとされていたようです。

なぜ麦なのかといえば、「雪下出麦(※下記リンクをご参照ください)」 でも書きましたように、麦踏みをしたり、麦褒めをしたり、冬の間に日々、手間をかけ、目をかけている麦の芽の順当な生育を願ったからでしょう。

ちなみに晴れると豊作とされる日は他にもあって、彼岸太郎(彼岸の一日目)、八専太郎(選日の八専の二日目)、土用三郎(土用の三日目)で、最後が寒四郎です。
といっても晴れるばかりが吉報というわけではなく、「寒九(かんく)の雨」は豊作の兆しといわれてきました。

「寒九」は寒の入りから九日目(1月13日か14日頃)。大事な水の日でもあり、「一年でもっとも水が澄む日」、「この日に汲んだ水は腐らない」といわれ、「寒九の水」は薬になるとか、肌がなめらかになるといわれていました。

水の質がよく、一年の中で水がもっとも清らかで、雑菌が少なく、美味しくなるので、お酒もこの季節に仕込んだものを「寒造り」といい、「寒仕込み」のお味噌も雑菌が入りにくく、ゆっくりと発酵するので美味しくなります。

ほかにも寒餅、寒天、干し芋、高野豆腐、葛粉など、寒さは色々なものを美味しくしています。十分な寒さがないと黴が生えてしまったり、しっかり固まらなかったり、日本にはこの寒さなくしては完成しない伝統食がたくさんあります。魚は脂がのって美味しくなりますし、ほうれん草や白菜などの野菜は寒いほど甘みが増します。

春へ、かすかな変化を見つめて

地上の厳しい寒さはまだ始まったばかりですが、地中深くでは静かに水が動き出し、凍土は下の方からゆっくりと溶け始めています。「水泉動」(しみずあたたかをふくむ)は、そんな地中の水の動きを表したものでしょう。
氷の張った池の底でも、かすかに水が動き始めています。はっきりと目には見えないけれど、春に向かうかすかな変化を繊細な目で見つめていた、先人達の眼差しを感じる七十二候です。

動画は群馬県川場村で撮りました。今はまだすっぽりと雪に埋まっている田んぼですが、お天気がよいと雪が溶け出して、山の湧き水がチョロチョロと美しい音を奏でています。

出典:暦生活

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